日本製軍艦が触り放題のタイ王国海軍の公園
バンコクの隣にあるサムットプラカン県はチャオプラヤ河で分断され、東岸、西岸に跨っている。中心地は東岸のBTSパクナム駅の周辺だ。
前回、タイの海軍博物館を紹介したが、おすすめは今回紹介するタイ海軍の公園の方だ。こちらは西岸の、まさにチャオプラヤの河口にある。正式名称は「ポム・プラジュンジョムクラオ」という。直訳すればプラジュンジョムクラオ要塞となるのかな。プラジュンジョムクラオはラマ5世のことだ。
タイ王国海軍は東南アジアを植民地化しようとするフランスなどに対抗するために1887年に創立された。海軍創立を指示したのはこのラマ5世だ。そのため、この要塞跡地には砲台の跡もあるし、ラマ5世王の銅像も置かれている。
タイの現王朝においては、このラマ5世王と前国王のラマ9世が国民から圧倒的な支持を得ていて、この公園の銅像もちょっとした参拝スポットになっている。
そんな公園の目玉展示物のひとつがこの戦艦だ。スループと呼ばれるタイプの軍艦で、タイではメークロン級と呼ばれる船になる。そして、このメークロンの由来となるのがまさにこの船で、艦名がメークロン号だ。
この軍艦は1937年に建造されたもので、日本製である。浦賀造船所で建造された。タイ海軍が発注したのは2隻のメークロン級の船で、1隻は1945年の終戦間際に連合国の攻撃で大破した。タイは終戦のその日まで日本と同盟国だったので、このようにタイ軍の昔の軍備の中には日本製のものが少なくない。
メークロン号は戦争を無事生き延び、さらには練習艦として1973年まで実際に使用されていた。戦時中の日本製軍艦の中でもかなり長く現役で使用されていた艦艇なのではないだろうか。
その後、この要塞跡地に静態保存されている。タイの博物館は日本と違って展示物をかなり近くで見られる、あるいは触ることが可能だ。このメークロン号も外から見るだけでなく、中に入ることもできる。
1973年まで使用されていたので、部分的に補修されたためかオリジナルとはかなり変わっているところもある。しかし、当時からいじっていない部分もあって、隅の方に日本語が見られるなど、歴史ファンから見てもきっと貴重な展示物だと思う。
難点は炎天下にあるので、暑いことだ。甲板は直射日光でフライパンのように熱くなっている。
船内にも入ることができる。船室や食堂などを見ることが可能だ。
この船は運用時は52人に船員が乗っていたそうだ。しかし、巨大戦艦というわけではないので、船内はかなり狭い。この点は注意が必要だ。当時のまま展示されているので、頭をぶつけてしまうこともある。
階段もかなり急だ。昔のままなのでそのリアルさには感動するが、子どもは注意しておかないと、場合によっては骨折レベルのけがもしかねない。当然ながらタイなので、けがをしても自己責任でしかない。
このようにブリッジにも入れる。操舵装置もそのまま残っているが、部分部分に戦時中とは違うものがあることがすぐにわかる。
おそらく艦長の席だろうか。これも戦時中のものとは思えないタイプなので、戦後に取り換えたと見る。
こういった機銃なども触れる。これなんかはハンドルを回すと実際に台座が回転した。
さて、この公園の目玉はほかにもある。まずラマ5世王の銅像、砲台跡、メークロン号が見どころで、最後の注目は上の画像の左下奥に見える赤い屋根だ。
赤い屋根は海軍のクラブハウスで、そこには海軍直営(?)のシーフードレストランがある。料金はやや安めの上、それなりにおいしいので、タイ人からも人気が高い。
これが目的でここを訪れる人もいるくらいで、昼時などはかなり混んでいる。
メニューは定番のタイ・シーフードで、エビの炭火焼などがある。
子どもたちにはエビフライもある。タイ語ではグン・チュッペントートだ。
これはエビチャーハン。カニのチャーハンもある。このチャーハンは結構おいしかった。人気メニューらしく、多くの席で注文されていた。
メークロン号はチャオプラヤ川の西岸の河口辺りにある。バンコク中心地から車で来るとするとかなり遠い。タクシーも行ってくれないだろう。しかも、タクシーを帰してしまうと自分の帰りの足がなくなる。海軍施設なので流しのタクシーは来ない。そもそも、マングローブしかないような場所なので、タクシーが近辺に来ない。
レンタカーで行くか、タクシーは往復でキープしておく必要がある。あと、もうひとつの行き方がある。BTSを使う方法だ。
BTSを使っていく場合は、ちょっとしたデイトリップになる。まず、BTSパクナム駅まで行き、パクナム市場に行く。そこに船着き場があるので、対岸に渡る。向こう側はプラ・サムットジェーディーという船着き場だ。
この船着き場にタクシーがいる。ここのタクシーは要塞跡地もテリトリーなので乗車拒否はないはず。とはいえ、必ず往復で連れて行ってもらうこと。
こうすれば電車でも行ける。往復&待ってもらう料金で、確か600バーツくらいかかったような気がする。決して安くはない。でも、ここは観る価値があるので、一度は足を運んでもらいたい場所だ。
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